自宅のベランダや壁に設置されているエアコンの室外機。『天吊り』と呼ばれる設置方法ですが、実はこの設置方法、長年住んでいると様々な悩みの種になることがあります。
「思いのほか、運転音がうるさくて眠れない…」
「振動が!気になる!」
「お手入れって、どうするの?とどかないし、見えない」
「ベランダの見た目がごちゃごちゃ、部屋からの景色もよくない!」
「洗濯物が干しにくい」
「設置金具が錆びて落ちてこないか心配」
もしあなたがそんな悩みを抱えているなら、室外機を『地面置き』に変更することで、これらの悩みが一気に解決するかもしれません。今回は、実際に天吊りから地面置きに変更した事例をご紹介します。
そもそも、なぜ、天吊りにしたの?
主に物理的な制約や建物の設計思想が関係しています。賃貸や建売住宅で天吊りが多い理由は以下の通りです。
- スペースの有効活用と標準化
最も大きな理由は、地面のスペースを空けるためです。ベランダや通路の確保: 特にマンションやアパートなどの集合住宅、あるいは狭小住宅のベランダでは、地面に室外機を置くと洗濯物を干すスペースや人が歩くスペースがなくなってしまいます。天吊りにすることで、床面を居住者が自由に使えるように設計されています。
共用部分のルール:賃貸物件やマンションのベランダは共用部分とみなされることが多く、避難経路を塞がないように、また景観を統一するために、設置場所が指定されているケースがほとんどです。 - 環境要因からの保護
地面から離すことで、室外機を様々な外的要因から保護するという目的もあります。浸水・水害対策: 地面に置くと、大雨や洪水などで浸水するリスクがあります。少しでも高い位置に設置することで、故障のリスクを減らします。
汚れ・劣化の軽減:地面の土埃や泥はね、雑草の巻き込みなどを防ぎ、室外機本体や内部への影響を軽減し、耐久性を高める狙いがあります。
ペット・害獣対策:地面置きの場合、ペットが室外機に近づいたり、害獣が内部に入り込んだりするリスクがありますが、天吊りならそれを防げます。 - 設置の効率性(初期設置時)
建物を設計する側や施工業者にとっての効率的な理由もあります。配管ルートの最適化: 室内機が天井近くにあるため、冷媒ガスや排水の配管を最短距離で室外機まで持ってくるために、同じく高い位置(天吊り)が選ばれることがあります。
景観への配慮: 外から室外機が見えにくい位置(例えば、ベランダの内側上部など)に設置することで、建物全体の景観を損なわないように設計されている場合もあります。
これらの理由から、多くの賃貸物件や建売住宅では、初期の標準設置方法として天吊りが採用されているのです。
地面置きのデメリットとメリットを教えて!
室外機を地面置きにするメリット
1. 騒音・振動の軽減(最大のメリット)
天吊り金具や壁を伝わって発生していた振動や騒音が大幅に軽減されます。
- 共振の防止: 室外機本体は地面に設置された架台(ブロックや専用台)にしっかりと固定されるため、建物構造への振動の伝達が最小限に抑えられます。
- 静かな住環境: 騒音問題が解消され、静かな環境で快適に過ごせるようになります。
2. メンテナンスと掃除が容易
作業性が格段に向上します。
- 安全な作業: 脚立を使わずに手が届く位置になるため、安全にフィルターや周りの清掃ができます。
- 点検のしやすさ: 異常音や水漏れがないかなど、目視での日常点検が容易になります。
3. 安全性の向上
設置金具の経年劣化による落下リスクがゼロになります。
- 落下不安の解消: 特に古い建物では、金具の錆びつきやビスの緩みによる落下への不安がなくなります。
- 地震対策: 地震で大きく揺れても、地面に固定されていれば落下することはありません。
4. ベランダの使い勝手向上
頭上の圧迫感がなくなり、ベランダ空間を有効に使えます。
- 空間の確保: 洗濯物を干す際に邪魔になったり、頭をぶつけたりする心配がなくなります。
- 景観の改善: 頭上のごちゃつきが解消され、すっきりとした景観になります。
室外機を地面置きにするデメリット
- 地面スペースの占有
天吊りの最大のメリットだった「スペース確保」が、そのままデメリットになります。
通路の狭窄:ベランダの広さによっては、人が通るスペースや洗濯物を干すスペースが狭くなる可能性があります。
避難経路の問題:マンションの規約によっては、地面置きにすると避難経路を塞いでしまうため、設置自体が許可されない場合があります。 - 浸水・汚れのリスク
地面に近くなることで、環境的なリスクが発生します。
水害への弱さ:大雨や洪水が発生した場合、地面置きは浸水しやすくなります。架台などで少し高さを出す対策が必要です。
汚れやすさ:土埃や泥はねの影響を受けやすくなります。定期的な清掃が必要になります。 - 外観・景観の変化
建物の外観やベランダ内の景観が変わります。
目立つようになる:天吊りの時は目立たなかった室外機が、地面に置くことで存在感を持つようになります。
配管ルートの変更:配管を長くしたり、立ち下げたりする必要があるため、配管カバーなどで見た目を工夫しないと、ごちゃついた印象になることがあります。
室外機を地面置きするときのポイント
直置きはせず、必ずブロックや架台を使い、地面から離して水平に設置する。
害虫の侵入や水漏れ、故障の原因になるため、ドレンホースを地面に直接つけない。
どちらを選ぶべきか…
最終的に「天吊り」か「地面置き」かを選ぶ際は、「ベランダの広さ」「騒音への敏感さ」「建物の規約」の3つを考慮して判断しましょう。
- スペースが十分にある場合
結論:地面置きが標準的でおすすめです。
騒音・振動を最優先したい方: 集合住宅で隣人への配慮が必要な場合や、寝室の近くで騒音が気になる場合は、迷わず地面置きを選びましょう。騒音トラブルを未然に防ぐことができます。メンテナンスの手間を減らしたい方: 掃除や点検を安全かつ手軽に済ませたい場合にも適しています。
設置の注意点:
必ず架台(ブロックや専用台)を使用してください。地面に直接置くと、泥はねや湿気で故障の原因になります。
避難経路を塞がないよう、設置場所を工夫してください。 - スペースが狭い場合
結論:天吊りが有効な選択肢です。
ベランダを広く使いたい方: 洗濯物干し場や避難経路を確保するために、床面を空ける必要がある場合に適しています。賃貸物件の規約で決まっている場合: 管理規約で地面置きが禁止されている場合や、現状復帰が求められる場合は、天吊りのまま維持するのが無難です。
設置の注意点:
騒音対策として、防振ゴムや防振マットを設置金具に挟み込むことで、振動を軽減できる場合があります。
定期的に金具の点検を行い、錆や緩みがないか確認しましょう。
その他の考慮事項
設置場所の条件:どちらの設置方法を選んでも、室外機が水平に保たれていることが必須です。
日当たりと風通し:風通しが悪く直射日光が当たる場所は避け、日陰になるように設置するのが理想です。
作業前


室外機を天吊りから地面置きへ変更する大まかな作業工程
この作業は、冷媒ガスや電気工事の専門知識・資格が必要なため、必ず専門のエアコン工事業者に依頼してください。
- 既存の室外機の状態確認と準備
まずは現在の設置状況を確認し、必要な準備を行います。
現地調査: 業者が訪問し、現在の天吊り位置、配管ルート、地面置きを希望する場所を確認します。
必要な部材の確認: 配管の延長が必要か、新しい架台や配管カバーが必要かを判断します。
スケジュールの調整: 作業日程と見積もりの確認を行います。 - エアコンガスの回収(ポンプダウン)
最も重要な専門作業です。室外機内の冷媒ガスを大気中に放出せず、室外機本体に閉じ込める作業を行います。
ポンプダウン: エアコンを冷房運転させながら、バルブ操作でガスを室外機内に回収します。この作業を怠ると、ガスが抜けてしまい、エアコンが効かなくなります。 - 既存室外機の取り外し
ガス回収後、安全に室外機を取り外します。
配管・電線の取り外し: 室内機と室外機を繋いでいる配管と電線を外します。
天吊り金具からの撤去: 室外機本体を天吊り金具から降ろします。
金具の撤去(任意): 不要になった天吊り金具や古い配管を撤去します。 - 新しい設置場所の準備
地面置きのための準備をします。
設置場所の清掃: 地面をきれいに掃除します。
架台の設置: ブロックや専用のプラスチック架台を水平に設置します。 - 新しい場所への室外機設置と接続
室外機を移動させ、再接続します。
室外機の固定: 架台の上に室外機を乗せ、動かないようにしっかり固定します。
配管・電線の接続: 必要に応じて配管を延長し、室内機と室外機を再接続、電線も繋ぎ直します。 - 真空引き(エアパージ)と試運転
これも専門的な仕上げ作業です。
真空引き: 配管内や接続部に残った空気や水分を「真空ポンプ」という専用工具で完全に抜き取ります。これをしないと、エアコンの効きが悪くなったり、故障の原因になります。
ガスの開放: 室外機に閉じ込めておいた冷媒ガスを開放し、配管内に流します。
試運転: 電源を入れて試運転を行い、正常に動作することを確認し、ガス漏れがないかチェックします。
作業中

作業後
無事にすべての作業が完了しました。長年悩みの種だった室外機の天吊り設置が解消され、ベランダはこんなにスッキリと生まれ変わりましたー


今回は室外機の位置変更だけでなく、室内機交換も同時に行いました。
新しい配管ルートも、しっかりとした配管カバー(スリムダクト)で保護されており、見た目も美しく、劣化の心配もありません。
古い天吊り金具や、使わなくなった古い配管類もすべてきれいに撤去・処分します。
最後に試運転を行い、冷暖房が問題なく機能することを確認して作業完了です。
まとめ
エアコンの室外機の位置変更・設置電気工事は、単なる追加作業と費用ではなく、「新しいエアコンの性能を最大限に引き出し、お手入れしやすく安全で快適な暮らしを守るための投資」と言えます。
交換を依頼する際は、
- なぜその工事が必要なのか
- 見積もりの内訳にどのような工事が含まれているのか
を事前にしっかりと確認し、信頼できる専門業者に依頼することが大切です。見えない部分までしっかり整備することで、快適なエアコン生活を長く続けることができます。
「これってどこに頼めばいいんだろう?どこに相談すればいいの?」と迷うようなことでも、どうぞお気軽に株式会社エヌ・アイ・シー(川崎市中原区電気工事.com)にご相談ください。
| 既設機種: | 室内機:RAS-2554D 室外機:RAS-2554AD1 日本キヤリア株式会社 東芝 |
| 交換機種: | Eolia (エオリア) Panasonic |
| 対応地域(エリア): | 神奈川県川崎市中原区 |
運営会社株式会社 エヌ・アイ・シー
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